DJIのFPVはなぜ「アマチュア無線で使えない」と言われる?3つの壁と合法3ルート
⚡ 3行まとめ — 急いでいる人はここだけでOK
- ルートは3つ: ①国内正規完成機(免許不要)②アマ局として開局(趣味・要保証)③三陸特+業務局(仕事)
- 「アマ無線不可」と書かれる商品は、業務用5.7GHz技適を取った特別モデル。制度をまたいだ転用はできない
- O3/O4単品は日本未発売=技適なし。O3は非公式系統図での開局実績あり(入手は人づて)、O4は系統図の公開入手手段がなく実質困難
ショップでDJIのエアユニットを見ていると、「アマチュア無線では使用できません」「要 三陸特」という注意書きに出会うことがあります。一方で、コミュニティでは「O3をアマチュア局で開局した」という報告もある。矛盾しているようで、していません。この記事では、DJIのデジタルFPVを日本で使う3つのルートと、混乱の原因になっている3つの壁を整理します。
結論の地図——合法ルートは3つ
ポイントは、同じ「DJIのFPV」でも製品によって入口が違うこと。そしてルートをまたいだ転用ができないことです。
ルートA: 国内正規の完成機——いちばん簡単
Avata 2やNeoなど、DJIが日本で正規販売している完成機FPVドローンは、2.4GHz帯の技適を取得済みです。箱から出してそのまま飛ばして合法(もちろん航空法のルールは別途あります)。無線の免許も開局申請も要りません。
代償は伝送性能です。日本版は使える周波数と出力が海外版より制限されており、遠距離・障害物越えの粘りは5.8GHz運用のシステムに劣ります。それでも「まずゴーグル視点で飛ばしてみたい」への最短ルートはここです。
ルートB: アマチュア局として開局——自作派の趣味ルート
海外から購入したO3/O4 Air Unitを自作機に載せて趣味で飛ばすなら、アナログVTXと同じくアマチュア無線局としての開局が必要です。流れは開局申請コンプリートガイドの通り、アマ4級→保証認定→開局申請。
ただし、DJIには他社にない問題があります。
DJIは系統図を公式に出しません。HDZero陣営(BetaFPV製VTXなど)が系統図をメーカーサイトで公開しているのに対し、DJIは内部設計を公開しない方針です。しかも系統図は「ネットに公開で落ちている」ものではなく、系統図を有償販売している国内ショップですらデジタルVTX(DJI・Walksnail・HDZero純正)は解析対象外と明記しています。実際に開局した人は、開局済みユーザーからの譲り受けや店頭相談など人づてのルートで書類を確保しています。O3では保証認定を通した実績が複数報告されている一方、書類や時期によっては保証が通らなかったという報告もあるのがDJIの実情です(VTX申請実績DB参照)。
もうひとつの制約として、アマチュア無線は法律上「金銭上の利益のためでない」個人的な興味の業務です。アマ局で開局した機体を仕事(報酬のある撮影など)に使うことはできません。
ルートC: 業務用5.7GHzモデル——「アマ無線不可」の正体
ショップで「アマチュア無線では使用できません・要三陸特」と書かれているDJI製品は、このルートCの製品です。
これは、販売店側が**「5.7GHz帯 無人移動体画像伝送システム」という業務用制度の技適(工事設計認証)を取得した特別モデル**。買った人は三陸特(第三級陸上特殊無線技士。1日講習で取得可)以上の資格を取り、JUTM(日本無人機運行管理コンソーシアム)に加入して、業務用の無線局として使います。プロの空撮現場で使われているのはこれです。
ではなぜこのモデルがアマチュア局として使えないのか。ここに3つの壁があります。
壁① 制度が違う
この製品の技適は「業務用の陸上移動局」としての認証です。アマチュア局は別の制度で、認証を使い回す仕組みが存在しません。同じハードでも、どの制度の免許で電波を出すかで合法/違法が決まるのが電波法の世界です。
壁② 系統図の壁
アマチュア局として開局し直すには保証認定=系統図が必要ですが、前述の通りDJIは公式に出しません。業務モデルの認証は販売店が取ったもので、その書類はアマチュア局の保証には流用できません。
壁③ アマチュア業務の性質
アマチュア無線は「誰でも傍受できる公開の通信」が建前で、秘匿目的の暗号(暗語)の使用が禁止されています。DJIの伝送は暗号化されているため、アマチュア業務との相性が原理的に悪い——という論点が昔から指摘されています。実務の保証審査は系統図と技術基準で判断されており「暗号化=即アウト」と運用されているわけではありませんが、DJIの公式協力が期待できない構造的な背景のひとつです。
逆方向もNG——業務モデルを趣味で使えない
見落とされがちですが、逆も成り立ちます。ルートCの業務局は業務のための免許なので、休日に趣味のフリースタイルを飛ばす用途には使えません。「仕事でも趣味でも使える1台」は現行制度では作れず、趣味はルートAかB、仕事はルートAかCと、目的ごとに機材と免許を分ける必要があります。
今後変わる可能性は?
5.8GHz帯のドローン利用は総務省で検討が始まっており、2024年11月には5.8GHz帯ドローン用の特定実験試験局(エリア・周波数限定の実験枠)の告示が公布されました。海外並みに免許不要でFPVが飛ばせる日が来るかは未知数ですが、制度が動き始めているのは事実です。動きがあればこのサイトで追いかけます。
FAQ
❓ FAQ — よくある質問
Q.Avata 2を買ったら無線の免許は要らない?▾
国内正規版なら不要です(2.4GHz技適済み)。ただし航空法の機体登録・飛行ルールは別途必要です。海外版(並行輸入)は技適がないため国内では使えません。
Q.O4 Air Unitを買って趣味で飛ばすのは違法?▾
アマ4級を取り、保証認定→開局申請を通してからなら合法です(ルートB)。免許状が届く前に電源を入れると違法になります。系統図の入手性に注意してください。
Q.三陸特モデルを買えば趣味でも飛ばせる?▾
飛ばせません。業務局は業務目的専用です。趣味ならルートA(正規完成機)かルートB(アマ開局)を選んでください。
Q.WalksnailやHDZeroなら悩まなくていい?▾
HDZeroはBetaFPV製VTXなどの系統図がメーカーサイトで公開されており、デジタルの中で最も確実です。一方Walksnailは注意が必要で、日本正規代理店の公式サポートは業務用(三陸特)ルート専用。アマ開局は並行輸入品+非公式系統図となり、実態はDJI O3と同じ「入手ルートを先に確保してから買う」世界です。
まとめ
- DJIのFPVは「製品」と「目的」で合法ルートが3つに分かれる。A: 正規完成機(免許不要)/ B: アマ開局(趣味)/ C: 三陸特+業務局(仕事)
- ショップの「アマチュア無線では使用できません」は、業務用5.7GHz技適モデルのこと。制度をまたいだ転用はどの方向にもできない
- O3のアマ開局は非公式系統図での実績があるが入手は人づて。O4は系統図の公開入手手段がなく実質困難(2026年7月時点)。確実性ならHDZero
次に読む: FPV開局申請コンプリートガイド / VTX申請実績DB / デジタルFPV3陣営の比較
SPONSORED
あわせて読みたい
おすすめVTX【日本版】性能より先に「開局できるか」で選ぶ2026年の結論
日本のFPVではVTX選びの第一基準は出力や画質ではなく「系統図が手に入り開局申請が通るか」。RushFPV Tank系・TBS Unify系などアマ開局の定番と、Whoop内蔵VTX、デジタルの現実まで日本特化で解説します。
機体制作VTX(映像送信機)の選び方|出力・周波数・法律の注意点を解説
FPVドローンのVTX(映像送信機)の役割、送信出力mWの選び方、SmartAudio、発熱対策、日本で使うための免許・開局申請までを初心者向けに解説します。
機体制作5インチ自作の「本当の総額」全公開|買い物リストと見落としがちな出費【2026年版】
5インチFPVドローンを飛ばせる状態にするまでの現実的な総額を、機体パーツ・映像系・電源系・工具・法律関係まで全部乗せで公開。カートに入れ忘れがちなスモークストッパー・コンデンサ・充電器の電源、リモートIDまで、実際の買い物での落とし穴つき。
連載「ルール・制度」の記事
記事一覧をすべて見る →- 01ドローン飛行の法律とルール|日本で飛ばす前に知っておくこと
- 02ドローンの機体登録のやり方|DIPS 2.0での手順とリモートIDを初心者向けに解説
- 03FPVの免許は「2枚」ある|人の免許と機体の免許、1枚の図で完全理解
- 04FPVに必要な無線の資格とは?アマチュア無線4級と開局申請の流れを解説
- 05一等・二等無人航空機操縦士は趣味FPVに必要?国家資格の中身と要否判断
- 06FPV開局申請コンプリートガイド|系統図・保証認定・書類の書き方まで
- 07リモートIDとは?自作ドローンに必須の外付け機器・免除条件・選び方
- 08100g未満のドローンは規制なし?「自由に飛ばせる」の本当と嘘
- 09「室内なら免許不要」は間違い|Tiny Whoopにも開局申請が必要な理由と、賢いまとめ申請術
- 10ドローンの飛行許可・承認申請のやり方|特定飛行とカテゴリーを解説
- 11DID地区(人口集中地区)の調べ方|地理院地図とアプリで30秒判定
- 12ドローン事故対応マニュアル|起こしてしまった最初の1時間にやること
- 13なぜ日本ではデジタルFPVが使いにくい?周波数帯の図で見る「本当の理由」
- 14ドローン保険は必要?賠償責任保険と機体保険の違いと選び方
- 15DIPSの飛行計画通報のやり方|特定飛行の義務・入力手順・よくあるつまずき
- 16DJIのFPVはなぜ「アマチュア無線で使えない」と言われる?3つの壁と合法3ルート読んでいる記事
- 17FPVの免許・登録・保険、全部でいくら?法律関係の費用を総まとめ
- 18海外BNF完成機は「安い」だけじゃない|買う前に確認する3つの質問【実例つき】
- 195.8GHz規制緩和ウォッチ|FPVが免許不要になる日は来るのか【随時更新】
- 20ドローンの夜間飛行はどこまでOK?必要な承認・灯火・現実的なハードル
- 21ドローンを飛ばしていて通報・職務質問されたら|正しい対応と携帯すべき書類
- 22公園・河川敷でドローンは飛ばせる?場所探しのルールと確認手順
- 23ドローンの高度150m制限とは|「地表から」の意味と山・ビル・空港での注意
- 24お祭り・イベント上空でドローンは飛ばせない|「催し場所」ルールの範囲と例外
- 25山・国立公園でドローンを飛ばせる?森林・公園の管理者ルールと山特有のリスク
- 26海・ビーチでドローンを飛ばすルール|DID外でも残る4つの確認と塩害対策
- 27無線局免許状が届いたらやること5つ|電波利用料・写しの携帯・OSDのコールサイン
- 28無線局免許の再免許(5年更新)のやり方|期限・費用・忘れた場合のリカバリー
- 29VTXを買い替えたら「変更申請」|送信機の増設・取替の手続きと費用
- 30コールサインとは?FPVでの使い方|OSD表示という現代の名乗り方
- 31ドローンの条例の調べ方|航空法OKでも飛ばせない「自治体ルール」の探し方
SPONSORED
コメント・質問
記事への質問や感想をどうぞ。投稿は公開されます。個人情報や攻撃的な内容は控えてください。
コメントするにはログインしてください。
まだコメントはありません。最初の投稿をどうぞ。